専門医に聞く 乾癬治療のフロントライン

一人ひとりの症状や生活に合った治療を選べる時代に。あきらめないで、投げ出さないで、相談を。 岐阜大学大学院医学系研究科皮膚病態学教授 清島 真理子 先生

略歴

1980年 岐阜大学医学部卒業
岐阜大学医学部皮膚科入局
1985年 県立岐阜病院皮膚科
1986年 岐阜大学医学部皮膚科 助手
1988-90年 米国ニューヨーク大学皮膚科留学
1990年 岐阜大学医学部皮膚科 助手
1992年 岐阜大学医学部皮膚科 講師
1998年 大垣市民病院皮膚科 医長
2005年 大垣市民病院皮膚科 部長
2009年 岐阜大学医学部皮膚科 教授
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岐阜大学病院は皮膚科のなかに乾癬外来を設け、乾癬の治療に積極的に取り組んでおられる病院の1つです。今回は、当大学皮膚科教授の清島真理子先生に、これまでの治療法とTNFα阻害薬はどこが違うのかを教えていただきました。

●TNFα阻害薬は、皮膚、爪、関節などさまざまな症状に有効効果の現れ方も速やか

-まずは、岐阜大学病院で行っている治療法について簡単にお聞かせください。

岐阜大学病院の乾癬外来で治療を受けている乾癬患者さんは250~300人くらいで、そのうち40~50人が新患の患者さんです。大学病院なので、一般の病院に比べると中等症から重症の方が多いと思います。
軽症の場合は、ステロイドやビタミンD3などの外用薬を塗布する外用療法、紫外線を照射する光線療法が中心です。中等症以上の患者さんや、外用療法、光線療法で良くならないときには、免疫の異常に働きかける薬を服用していただいたり(内服療法)、「TNFα阻害薬」と呼ばれる新しい薬での治療を行っています。

-TNFα阻害薬は、これまでの治療法とどのような点が違うのでしょうか?

岐阜大学大学院医学系研究科皮膚病態学教授 清島 真理子 先生

1つめは、皮疹の改善効果がすぐれていることです。皮疹の重症度を判定するための指標にPASI(Psoriasis Area and Severity Index)と呼ばれるスコアがあります。当院でTNFα阻害薬を投与した患者さんの約7割でPASIが75%以上改善、つまり皮疹の範囲でいうと、治療前の1/4にまでなっています。なかにはPASIの改善が100%近くにまでなり、症状がほとんどなくなった患者さんもおられます。
2つめは、効果の発現が速やかなことです。これまでの治療は、効果が出るまでに時間がかかりました。効果を上げるために外用療法、光線療法、内服療法を組み合わせた治療を行いますが、患者さんは毎日毎日、薬を塗ったり、飲んだりしなければならず、その手間や頻繁な通院が負担になっていた方もいらしたと思います。しかし、TNFα阻害薬を使うと、薬を点滴した直後やその翌日から、紅斑(皮膚の赤み)がひいたり、関節の痛みがやわらいだりする方もたくさんおられます。
3つめは、従来の治療では苦労することが多かった爪、関節などの症状にも効果があることです。関節症性乾癬というタイプの乾癬では、関節に痛みや腫れが起こります。関節の痛みはなかなかとれないことが多く、私たち医師にとっても一番の悩みでした。
このようにTNFα阻害薬は有効性の高い治療薬です。しかし、効果は患者さんによって違うので、思ったような結果が出ない場合もあることをご理解いただきたいと思います。
また、TNFα阻害薬を投与すると感染症にかかりやすくなるなど、安全性の面で注意しなければならないこともいくつかあるので、投与前に胸部のX線検査や血液検査などを行います。

●TNFα阻害薬の使用にあたっては、乾癬の種類、症状の程度、日常生活への支障度などさまざまな要素を考慮

-TNFα阻害薬は、どのような患者さんに適しているのでしょうか?

まず、従来の治療法では効果が得られにくかった関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の患者さんでは、早期からTNFα阻害薬の使用を考慮します。
一方、乾癬の8割以上を占める尋常性乾癬の場合、いろいろな側面から適応を考えます。基本的には、皮疹が出ている範囲が広く、重症度の高い患者さんが対象となります。しかし、重症度が高くなくても顔、手、爪など人目につく部位に症状があり、患者さんが日常生活で困っている場合は、生活の質(Quality of life:QOL)を高めるために、TNFα阻害薬の使用を考慮しています。
その他、腎臓の機能が低下しているなど内服療法が難しい場合にも、TNFα阻害薬が選択肢の1つとなります。